N前工場長の説明を聞きながら指定されたルートを回って行きましたが、主任裁判官は巾木工程で、自ら「リップはどれですか?」と、巾木製造中の金型リップのところに行き、N前工場長にリップとはどのようなものかと詳しく説明を求めていました。さらに主任裁判官は「リップ会議というのをやってるんですね。」とN前工場長に質問していました。原告が偽装請負の証拠としている、東リが請負従業員を集めて月に1回開いていた会議のことです。但し東リはライフイズアート社が開いていた会議に呼ばれて出ていた(全く事実ではない)と主張しています。いずれにせよこの部分は裁判の中で偽装請負の判断として大きな要素になるかもしれません。
視察は巾木工程から化成品工程を順番に回りましたが、工場内は粉塵が舞い、かなり汚れていたので、裁判官、弁護士のスーツには所々汚れが付いてしまいました。皆、マスクとヘルメットを着用し、足元に気をつけながら、N前工場長の説明に耳を傾けていました。しかしおかしな事にN前工場長が現役の工場長だった頃は、巾木工程、化成品工程共に請負会社に業務を任せていたはずなのに、全てを詳細にまで把握してることに矛盾を感じざるを得ませんでした。
工場視察が終わった後、4月から新たに着任した泉裁判長(元弁護士、大阪弁護士会出身)が「有意義な視察だった」と感想を述べられました。書面だけでは伝わらなかったことが、この視察で裁判官、原告代理人も作業についてよく理解できたと満足気でした。
視察後の協議では次回期日の予定について話し合われました。原告から証人として求めている東リの巾木工程担当スタッフT氏については、被告東リは上申書の通り、証人として出廷はさせない、N前工場長だけで充分であるという主張を崩しませんでした。最後に裁判長は、次回期日はこの視察を踏まえて主張を整理する必要があり、証人を決めるところまでは難しいという見解を示されました。
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