7月12日に続いて、2回目の証人尋問が8月9日に行われた。神戸地裁には45名の支援者が傍聴に詰め掛けた。傍聴席は40席で、先に被告東リ側が6席を占めていたため、9名が溢れる結果となった。途中、傍聴者の入れ替えもあったが、全く法廷に入ること出来ずに、裁判所を後にした人も出た程だ。それから前回と同様、労組関係の応援も多く、総勢9団体に上った。
証人尋問は被告東リの主尋問から始まった。伊丹工場の前工場長N氏である。N氏は毎朝工場内を巡回していたが、各工程の業務については把握しておらず、現場における原告らへの指揮命令は、もっぱら東リ正社員のスタッフ行なっていたので、「Tスタッフはしていないと言ってました」「Tスタッフはそのようなことは言ってないと聞いてます」と伝聞の話ばかりをしていた。原告側は伊丹工場巾木工程の業務に携わっていたTスタッフを証人として呼び出す意向だったが、東リが拒否したので、一旦裁判所が保留としていたが、結局それは実現しなかった。
被告側N氏の主尋問は苦しい言い逃れが目立った。例えば原告藤井氏前回の証人尋問で、始業前のミーティングにはTスタッフが同席していたという証言に対し、「T氏は出勤が午前8時なので、7時始業前のミーティングには参加できない」と反論した。しかし巾木工程は3交替制なので、午後3時の始業前のミーティングには参加していたのである。またT氏が巾木工程向けに作成した報連相の指示文書について、「請負社員のH氏から頼まれて作った」と明らかに嘘とわかる証言もあった。
村田弁護士から前工場N氏への反対尋問は請負と派遣の契約についてであったが、東リは過去において、どのような契約を結んでいたかについては明らかにしておらず、N氏は「わかりません」という答えに終始した。2017年以前の派遣契約についても、N氏は責任者でありながら内容を把握しておらず、派遣の期間制限を示す抵触日の告知もやっていなかったことがわかり、東リの杜撰な管理体制が露わになった。
裁判長は「請負の時と、派遣に切り替えた時、新たな派遣会社に引き継がれた後、何か業務に違いはありますか」とN前工場長に質問したが、N氏は「指揮命令の問題だけですので、業務には違いはありません」と答えた。つまり指揮命令権が東リにあるか請負会社にあるかという違いだけで、派遣であろうと請負であろうと、現場での実態は何も変わらないということである。
原告有田の主尋問では、膨大な証拠を元に証言を積み重ねて行った。25分という短い時間ではあったが、前回の証人尋問で不足したことを含め、概ね言いたいことは言えたと、原告弁護団は満足気だった。
被告側からの反対尋問では、東リからの指示については安全上、品質管理上のことであると印象付けようとしていた。これは労働局の偽装請負の判断に沿った考えで、安全上、品質管理上、緊急かつ必要とされることは日常的指揮命令とはならないとしている。しかしこれはあくまでも厚労省の告示に基づいた労働局の見解である。村田弁護士が言うように偽装請負の判断は独立性、専門性、指揮命令など総合的になされるべきで、この裁判で村田弁護士が強調したのは、原告らが働いていた工程は東リの一部であり、東リシステムに組み込まれていたということである。日常の指示は熟練工になればなるほど必要でなくなり、その結果、指示がほとんどないからといって、偽装請負でないという考え方は、実態を無視したものと言わざるを得ない。
報告集会で村田弁護士は「証人尋問は有利に進んだと感じるが、これで勝てなかったら裁判所に騙されたというしかない」と言ったが、多くの傍聴者もそう感じたかもしれない。次回11月15日期日は結審し、来年早々には『労働契約申込みみなし制度』の初めての判断が示される。良い判決を期待したい。
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8月9日裁判報告集会 |