2019年5月2日木曜日

東リ伊丹工場へ裁判所が視察

 4月25日神戸地裁の裁判官が東リ伊丹工場に出向き、原告たちが就労していた巾木工程、化成品工程を視察しました。主な目的は現場では実際にどうのような形で作業が行われているか知ることです。神戸地裁からは裁判官と書記官の4名、原告からは当該3名、そして代理人の村田弁護士、大西弁護士、安原弁護士が参加しました。東リのN前工場長の案内に従い工場内を回りましたが、東リにとって都合の悪いところ(事務所など)はルートから外され、営業秘密を理由に現場の写真撮影も禁止されました。写真撮影については、原告にとっては重要な証拠になることも考えられるので、4月17日に神戸地裁で開かれた事前協議で、写真撮影を強く求めましたが、裁判所も任意で提出を求めることしかできないため、「裁判所または原告が必要と考えたところは、後日原告が任意で写真の提出を検討する。」という曖昧な文言を残したに留まりました。しかも5枚程度という限定付きです。視察の日はどういうわけか、巾木工場内にある正社員が作業をしているプリント巾木工程の稼働が止められていて、工場内で混在を示すようなものは片付けられていました。そのほか巾木工程内の掲示板には掲示物が1枚もなく、全て撤去されていました。また機械等に設置されているはずの作業手順書等も隠されていました。しかし全てが完璧に隠せるはずもなく、正社員の他工程と混在を示す部分も残っており、また現場の様子も視察によって確認されているため、隠している部分も通常は混在があるということを裁判で主張しやすくなります。

 N前工場長の説明を聞きながら指定されたルートを回って行きましたが、主任裁判官は巾木工程で、自ら「リップはどれですか?」と、巾木製造中の金型リップのところに行き、N前工場長にリップとはどのようなものかと詳しく説明を求めていました。さらに主任裁判官は「リップ会議というのをやってるんですね。」とN前工場長に質問していました。原告が偽装請負の証拠としている、東リが請負従業員を集めて月に1回開いていた会議のことです。但し東リはライフイズアート社が開いていた会議に呼ばれて出ていた(全く事実ではない)と主張しています。いずれにせよこの部分は裁判の中で偽装請負の判断として大きな要素になるかもしれません。
 視察は巾木工程から化成品工程を順番に回りましたが、工場内は粉塵が舞い、かなり汚れていたので、裁判官、弁護士のスーツには所々汚れが付いてしまいました。皆、マスクとヘルメットを着用し、足元に気をつけながら、N前工場長の説明に耳を傾けていました。しかしおかしな事にN前工場長が現役の工場長だった頃は、巾木工程、化成品工程共に請負会社に業務を任せていたはずなのに、全てを詳細にまで把握してることに矛盾を感じざるを得ませんでした。

 工場視察が終わった後、4月から新たに着任した泉裁判長(元弁護士、大阪弁護士会出身)が「有意義な視察だった」と感想を述べられました。書面だけでは伝わらなかったことが、この視察で裁判官、原告代理人も作業についてよく理解できたと満足気でした。
 視察後の協議では次回期日の予定について話し合われました。原告から証人として求めている東リの巾木工程担当スタッフT氏については、被告東リは上申書の通り、証人として出廷はさせない、N前工場長だけで充分であるという主張を崩しませんでした。最後に裁判長は、次回期日はこの視察を踏まえて主張を整理する必要があり、証人を決めるところまでは難しいという見解を示されました。

中之島メーデー