2018年11月25日日曜日

11月20日の行動報告-労働委員会とOMMビル前宣伝行動


 1120日は兵庫県労働委員会不当労働行為救済申立第一回審問の日だった。それに先立って午前8時半から京阪天満橋OMMビル前で宣伝行動を行った。OMMビル7階には東リ大阪営業所が入っており、9時から争議解決を求める申し入れを合わせて行った。開始時間には「なかまユニオン」の顔ぶれだけでなく、前々日に統合大会を終えたばかりの「連帯ユニオン関西ゼネラル支部」や、天満橋に事務所を構える「大阪全労協」からも支援に駆けつけてくれた。「東リの偽装請負を告発し直接雇用を求めるL.I.A労組を勝たせる会」として、一つのユニオンの枠を超えた、共闘が実現しつつあることを実感した。朝の通勤時間帯、出勤する会社員で人通りも多く、200枚用意したビラもほとんど配布し終えた。裁判直前には伊丹の東リ本社前でビラまきをするのだが、住宅地に隣接している上に人通りも少なく、また早朝ということもあり拡声器を使うこともできず、なかなか近隣住民には争議をアピールすることができなかった。しかし大勢の人々が行き交う大阪の中心部で宣伝行動ができたことは、東リが偽装請負により非正規労働者を意のままに扱い、逆らったものは容赦無く排除するという非道な行いを、少なからず世間に知らしめることができたのではないかと思う。





 9時からは東リへ争議解決の申し入れをするために、当該L.I.A労組の2名と応援者4名を加えた交渉団が7階にある東リ営業所へ向かった。事務所の前では東リの社員1名が待ち構えており、彼の言い分は「ここは営業所であり、窓口ではないので、本社の窓口の方へ行ってくれ」ということだった。さらに「ここはテナントなので他の会社に迷惑がかかる」という趣旨のことも言っていた。しかし本社に行ったところで、窓口は閉ざされており、結局は門前払いにする魂胆は見え見えだった。東リは我々の要請事項を受け入れて、話し合いに応じるつもりは全くなく、徹底的に闘うつもりなのである。フロアーの廊下で交渉を行ったが、東リのその社員に決裁権があるわけでもなく、要請書を手渡すだけにとどまった。しかし実感としてはこの様な要請行動をテナントの大阪営業所でやられることを、東リ側はかなり困惑してるようだった。

京阪天満橋のOMMビル東リ大阪営業所前での抗議行動

 午後12時半からは兵庫県労働委員会で第一回審問があった。第一回と言っても二回目は最期陳述になり、証人尋問はこの一回限りであった。L.I.A労組側は途中参加含めて計21名が傍聴に駆けつけてくれた。
 この尋問の焦点は、東リがシグマテックに働きかけて、L.I.A労組の組合員5名だけを不採用にしたことを明らかにすることである。
 主尋問が開始された。L.I.A労組の一番目は藤澤委員長、次に藤井書記長、有田副委員長、中西組合員、久間田組合員の順番で行われた。各自初めての経験で、緊張のあまり予め準備していた通りにうまく行かない面もあったが、正直に事実を述べるだけであり、こちらの立場が悪くなるような発言はなかった。こちらの主張のポイントは「東リが36協定締結の引き延ばしを依頼してきたこと」、「工場長が組合員全員の雇用を保障すると言い、シグマテックへの移籍を求めたこと」、「工場長がシグマテックへ時間給から固定月給制にするように働きかけたこと」である。

 変わって東リとシグマテックの主尋問に移った。東リの長森前工場長はかなりの緊張している感じだった。代理人とのやり取りは、何度も何度もリハーサルを重ね、台本通りに進めていることが丸わかりだった。尋問前「良心に従って本当のことを申し上げます。」と宣誓をしたが、それが全く意味をなさない発言を彼は繰り返した。明らかに証拠があることでも「ございません」などと嘘をつき続けた。平然と嘘をつくというのではなく、覚悟の上での嘘という感じだった。手はブルブルと震え、一つの応答ごとに顔を下に向けた。額には汗が滲んでいた。東リ側の主張は我々の主張を全く否定するものであった。
 その次に証言したシグマテックの渡辺氏は「L.I.A労組の5人を不採用にしたことは、組合員であるからではなく、厳正に選考を行った結果であるとし、選考に関しては東リの介入はなく、全員を採用するとは言っていない」という姿勢を崩さなかった。
 反対尋問に移った。L.I.A労組のメンバーは相手代理人の激しいツッコミにうろたえる場面もあったが、基本的には真実を述べるという気楽さもあったため、大きな痛手はなかったように思う。藤澤委員長に関しては、いつもののらりくらりな感じが、相手代理人をイライラさせていたことが印象的だった。

 長森前工場長に対する反対尋問の中で、傍聴席を騒つかせる場面があった。「私は工場長だから人よりも物を作ることが大事だ」との趣旨の発言を受けて、傍聴者が口々に「モノ扱いしてる」「冷たい」という言葉が漏れ、それに対し長森前工場長は「私は冷たいです」と言い放った。それは大西弁護士が「なぜ一班4名全員を不採用にしてシグマテックに何も言わなかったのか」という尋問の時に起きたことだったと思う。嘘に嘘を重ねた結果、追い込まれて軽率に口から出た言葉ではあると思うが、モノ扱いというよりモノ以下扱いを意味する言葉であり、いかなる状況であろうと、そういう言葉を口にするべきではないということがわからないのは、大人として恥ずかしい限りである。

 審問が終わりに近づいた頃、最後に反対尋問を受けていたシグマテックの渡辺氏に公益委員が「5人を不採用にした選考基準が一体いかなるものなのか」ということを質問した。面談では簡単な適性テストと移籍後の労働条件を示しただけであった。短い人は15分程度で終わり、長い人では労働条件等の疑問を事細かに聞いたことで30分を超えるものもいたが、元々シグマテックは東リの製造業務の経験はなく、一切ノウハウもなかった。そのような派遣会社が何を基準にして、製造業務を熟知するベテラン従業員を不採用にしたかを公益委員は明らかにしようとした。しかし渡辺氏は「当社の基準に照らして、合うか合わないか」ということを述べていた。「その基準とは何か」との問いに、渡辺氏は「私と一緒に仕事ができるかどうか」と言い、決してL.I.A労組の組合員5人の業務遂行能力に言及することはなかった。公益委員は採用基準を明かすように何度も問うたが「ここで明かすことはできません」と採用の自由を盾に突っぱね続けた。

 審問が終わって、L.I.A労組の5人は尋問をやり切ったという安堵感と、一切の嘘のない証言をしたことで、喜びの気持ちに溢れていた。来年1月15日には最後陳述となり、5月には命令が下される予定だが、結果の如何にかかわらず、現状では気持ちの良さを感じている。結果は人間が判断することなので、我々に有利になるとは必ずしも言えないが、嘘を並べて自分たちに有利な結果だけを求める被申立人企業には決して屈してはならないと改めて強く思った。真実を以って虚偽に打ち勝つ!

 最後に6時間を超える審問に耐えて傍聴してくれた方々に感謝の意を表したい。
  Much appreciated !(本当にありがとう)

 そして今、東リに言いたいことは Shame on you !(恥を知れ)

2018年11月15日木曜日

『東リの偽装請負を告発し直接雇用を求めるL.I.A労組を勝たせる会』結成総会報告


 11月3日『東リの偽装請負を告発し直接雇用を求めるL.I.A労組を勝たせる会』が結成された。結成総会には「おおさかユニオンネットワーク」、「コミュニティユニオン関西ネットワーク」を始め、数多くの労組、関係者が駆けつけた。また韓国からのゲスト希望連帯労組の組織局長チェ・オスさんも参加してくれた。参加者は当該労組、弁護団含め総勢41名となり、結成総会は大いに盛り上がった。
 総会の開催に先立ち、この会の立ち上げ準備に奔走した「なかまユニオン」の井手窪委員長から経過報告の話があった。「この闘いは非正規労働者の闘いです。東リの中で長い者で15年以上偽装請負状態で働いてきた非正規労働者自身が声を挙げて、直接雇用申し込み制度によって、日本で初めて新しい法律を使って勝利の道を切り開いていく先進的な闘いです。」と発言し、この闘いの意義を強調した。「ネーミングのポイントは「偽装請負」「直接雇用を求める」「L.I.A労働組合」という文言にこだわったこと、やはりこの闘いはL.I.A労働組合5人の闘いで、その5人が自分たちの労働組合を強くし、自分たちを鍛える中でしか闘いに勝てないということです。」この闘いはあくまでもL.I.A労組が中心となること、それを支える意味で「勝たせる会」があるんだと。その言葉は当該組合員たちに自覚を促す強烈なパンチでもあった。



 次に弁護団からの闘争報告として村田浩治弁護士から話があった。村田弁護士は10年前、松下PDPの偽装請負事件で最高裁まで争って結果的に敗訴となり、それ以降、派遣労働者とりわけ偽装請負状態で働かされている非正規労働者にとっては厳しい状況が続いてきた。これまで偽装請負で働かされていた労働者が直接雇用を求めて裁判を起こしても勝つことができなかった。今回、村田弁護士を中心とする大西克彦弁護士、安原邦博弁護士の弁護団は、L.I.A労組の5人と共に201510月施行の改正労働者派遣法の規定にある『労働契約申し込みみなし制度』を使って、違法派遣、偽装請負から直接雇用を求める全国で初めての新しい挑戦をしている。「さんざん偽装請負で仕事をさせてきた東リに、それによって利益を得たことに対して責任をとってもらいましょうという、利益を得たものが雇用に対しても責任をもつという当たり前の話をしているだけであると。前は黙示の労働契約という話をしないと突破できなかったこの壁が、新しい労働者派遣法の適用によって、突破できるであろうと。突破しなければならない。この事件をきっかけに人を働かせて利益を得た者が雇用の責任も負うんだということを、法的にも明らかになったんだということを示すことが必要であると考えています。裁判所が変なことをしたらおかしいと、労働局がいつまで経っても偽装請負を認定しないのはおかしいという声を労働者の方から上げていくことが重要です。」という風に決意を込めて述べられ、反撃の狼煙を上げた。



 総会は議事へと移り、会則案、役員案、予算案、方針案が出され、会場からの拍手を以って賛同が得られ、共同代表には「おおさかユニオンネットワーク」の垣沼陽輔代表、「コミュニティユニオン関西ネットワーク」の大橋直人さんが選出された。

 まずは共同代表の挨拶として垣沼代表の「勝たせる会、絶対に勝たせようと」という力強い言葉から始まった。先日、最高裁で判決が出た長澤運輸とハマキョウレックスの話題を取り上げ、実際には判決が出た後でさえ会社側が条件を改悪していく例を紹介し、労働者の権利を守るためには組合運動によって切り返していかなければならないと、組合運動の重要性を語られた。そして最後に「私たちユニオンネットワークは30を超える中小の組合が集まっているので、一緒になってこの勝利のために頑張っていきたいと決意を述べて挨拶にしたいと思います。」と当該組合員たちを勇気づける言葉で締め括られた。
 それから同じく共同代表である大橋さんが「この闘いに勝たないと法律そのものが死文化してしまう。派遣という働き方が当たり前だからと、死文化していずれは法律が変えられてしまう。そういう意味では瀬戸際まで立たされてる状況ではないかと思ってます。この闘いは絶対に勝たなければならない。コミュニティユニオンも全面的に協力して勝つまで闘いたいと思います。」と、この闘いの重要性を語られた。

 連帯のあいさつでは大正区労連の栗尾議長が「首切りは許さない。家族を巻き込む、自分も死ぬ思いをする。勝つまで絶対諦めたらあかん。必要なことは職場に戻るということ。」と私たち当該を叱咤激励した。
 希望連帯労組のチェ・オスさんは「韓国でも直接雇用が認められている闘いがあるが、その闘いの始まりは今日のこの雰囲気と同じだった」と語った。
 それからいつもL.I.A労組の闘いに参加している関西ユニオンの大久保さんは「支援じゃないよ、共闘だよ。一緒に闘いましょ」とありがたい言葉を語ってくれた。

 連帯のあいさつの後、いよいよ当該のL.I.A労組の組合員が決意を語った。まず最初に委員長の藤澤は自分の生活を守りながら闘い抜く難しさについて語った。「来年は東リ創業100周年であり、勝負の年である。そういうことで働いている職場で休みを取ることが多くなるかもしれないと職場の主任さんに話したところ、「それは藤澤さんの問題でこちらの問題ではない。あまりちょくちょく休まれると派遣会社に言って契約更新を考えなけれならない」と言われた」と苦しさを露わにした。しかし『勝たせる会」の結成により闘うことができると感謝の意を表し、裁判に勝利すると語った。そして書記長の藤井は「この裁判を通じて全国の非正規労働者がどんなひどい目に会ってるか、私たちがどんなひどい目にあってるか全国の方に知ってもらって、非正規労働という言葉が世の中からなくなるようにしたいと思います。若い世代に私たちのような思いをさせたくない」と力強い言葉で思いを吐き出した。藤井は職場を追い出された後、生活の困窮に直面する中、この9月に母親を亡くした。それでも悲しみ苦しみの中から立ち上がり、この結成総会では「必ずこの闘いに勝利する」と誓った。続く組合員の中西は「東リに物凄い後悔をさせたいくらい、謝って欲しい」と東リの仕打ちに対する怒りを表した。
 結成総会の最後は藤澤委員長の団結がんばろうで締め括った。





あとがき
 東リ偽装請負闘争が始まってから1年半以上が経過した。いつ解決するのかもわからないというもどかしさを持ちつつ闘ってきたが、一方で一歩一歩歩みを続ければ必ずゴールに辿り着くと言い聞かせながら自分自身を励ましてきた。今回それに呼応する形で突然に「支援する会」の話が持ち上がり、その後、あっという間に結成に漕ぎ着けた。しかし会が結成されたことは喜びではあるが、それは本当の喜びではなく、本当の喜びを掴むためのスタートでしかない。実際には会結成後は多忙な日々が続き、気の休まる暇もなくなった。「勝たせる会」の結成で勝利する可能性は大きく前進することになったが、勝利するためには当該自身がそれに見合うだけの犠牲を払わなければならないことを自覚する必要がある。なぜなら私たちを支援してくれている人たちが、自分のことではないことを、私たちのために自分のことのように犠牲を払ってくれているのだから。